来院される患者さんの中に、親知らずが原因でトラブルを抱えている方が多くいらっしゃいます。 今回は、親知らずが引き起こすさまざまな問題と、その対処法についてお話しします。
親知らずとは?
親知らずは、前から数えて8番目に生えてくる歯で、正式には「第3大臼歯」または「智歯」と呼ばれます。
10代後半から20代にかけて生えてくることが多く、親に知られることなく生えてくるため、「親知らず」という名前がついたとも言われています。
親知らずは抜かないといけないの?
親知らずは一番奥に生えるため、歯磨きが難しく、汚れがたまりやすい歯です。
きれいに生えていて、しっかり磨ける場合は抜歯の必要はありませんが、他の歯(特に手前の歯)に悪影響を及ぼす可能性があるため、多くの場合、抜歯が推奨されます。
親知らずが引き起こす大きなトラブル
親知らずを放置していると、以下のようなトラブルが起こることがあります。
①隣の歯のむし歯の原因になる
親知らずが隣の歯に当たると、その部分に汚れがたまり、むし歯になることがあります。
親知らずだけでなく、手前の歯もむし歯になってしまうケースが多いです。
②歯周病の原因になる
親知らずの周りに歯周病菌が繁殖すると、骨が溶け始めます。
これが進行すると、手前の歯まで歯周病が広がり、歯を失うリスクが高まります。
③矯正治療後の後戻りの原因になる
親知らずの生え方によっては、矯正治療後に歯並びが再び悪くなる「後戻り」を引き起こすことがあります。
症例例
ある患者さんは、奥歯がしみるという症状で来院されました。
レントゲンを撮影すると、親知らずが原因で手前の歯がむし歯になり、保存できない状態になっていました。
歯肉の中の見えない部分でむし歯が進行していたため、患者さん自身も気づいていませんでした。
親知らずはいつ抜けばいいの?
「親知らずはいつ抜けばいいですか?」という質問をよく受けます。
年齢や状況によって異なりますが、以下のようなタイミングがおすすめです。
お子さんの場合
14~15歳頃にレントゲンで親知らずの「歯の卵(歯胚)」が確認できるようになります。
この段階で、歯並びや顎の成長を考慮し、抜歯を検討します。
早めに抜歯を済ませることで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
おすすめの時期
- 中学2~3年生
- 高校1~2年生
- 大学生の間
受験シーズンや就職後は時間が取りにくいため、学生のうちに抜歯を終わらせておくのがベストです。
大人の場合
年齢が上がると、抜歯後の骨の治りが悪くなるため、できるだけ早く抜歯することをおすすめします。
親知らずを保存する場合
親知らずを残す場合の条件は以下の通りです。
- 親知らずまでしっかり歯磨きができている
- 上下の親知らずがしっかり咬み合っている
- 手前の歯が悪く、スペアとして残しておく必要がある
- 入れ歯のバネとして使用する可能性がある
- 若年者で歯牙移植を検討している
- 高齢で抜歯による全身的な負担が大きい
ただし、これらのケースは妥協的なプランです。 ベストなのは、早めに親知らずを抜歯し、手前の歯をしっかり管理できる状態にすることです。
さいごに
親知らずを残しておくことで、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。とはいえ、抜歯には痛みや腫れのリスクもあり、恐怖心を感じる方も多いでしょう。抜くか抜かないかの最終判断は患者さん自身が行うものです。
当院では、患者さんが納得して抜歯を選択された場合、できる限り当院で対応いたします。まずはレントゲンやCT検査を行い、親知らずの状態を確認します。お悩みの方は、ぜひご相談ください。